クロヌマタカトシ 土の顔 小さい頃に度々、知らないおじさんが家に来ていた。 そのおじさんはいつも声が大きくて僕は少し怖かった。 鍵の掛かっていない玄関の引き戸をがらがらっと勢いよく開けて 「おーい、まーちゃんいるかー」と家中に響く声で叫ぶのだ。 大抵は母が応接してい... 2024.05.09 クロヌマタカトシ寄稿帖
ヒナタノオト工藝帖 なんとなくの先へ 七実さんへの手紙 七実さん、個展が無事終了いたしました。 充実の作品群、あらためて、ありがとうございました。 そして、お疲れさま、と心から労いたいと思います。 始まるまで。 特に案内状の制作でやりとりをしていた冬の終わりの頃、 心細そうな七実さんの声に、心配... 2024.04.27 ヒナタノオト工藝帖
ヒナタノオト工藝帖 春に得たもの Gökotta × Påskヨークオッタ × ポスク 糸花生活研究所(藤原洋人さん・藤原真子さん)佐藤かれんさんの作品展が終わり、スタッフ一同とても充実した気持ちでおります。ご来場いただきまして、あらためて御礼申し上げます。, 藤原さん夫妻... 2024.04.15 ヒナタノオト工藝帖
にしむらあきこ 恋する紙宝石 2年ぶりのヒナタノオトさんの個展です。 2年前、「青の王国」のあとにすぐ2年後の個展のお話をいただき、そのときから「恋」をテーマにしようと構想を練ってきました。 「恋」なんぞ遠いもの、忘れかけていたもの、懐かしいもの。 そんなふうに思ってい... 2024.02.13 にしむらあきこ寄稿帖
にしむらあきこ 父とダンス 夢をみた。 学校の校庭のどまんなかで、父はオフィスチェアに座っている。 よく身につけていた綿の水色のパジャマを着て、茶色の模様が入ったウールのガウンを羽織っている。 50歳くらいの時の父の姿をしていた。 長身細身でなかなかイケメンだったので... 2024.02.04 にしむらあきこ寄稿帖
にしむらあきこ わたしのともだち 明けない夜はない。 止まない雨はない。 使い古されて鮮度も落ち、ありきたりで色気のないこの言葉を、この2年近くなんどもなんどもの口の中でもごもごとつぶやいていた。 そういえば中学生の時の同級生は、同じような意味をもって「不景気のあとは好景気... 2023.10.08 にしむらあきこ寄稿帖
クロヌマタカトシ 温泉と水源 水が湧き出している場所が好きだ。 目には見えずとも土の中を脈々と流れ続け 僅かなきっかけで目の前に現れたそれに想いを馳せるのが好きだ。 いつに降った雨かも知れず、どこの山から来たのかも分からない。 渾々と、粛々と、どこにも威張る仕草もないま... 2023.01.02 クロヌマタカトシ
にしむらあきこ 空気をたべる人 先日、息子の通う放課後ディサービスで面談があった。 そこで担当のS氏は、息子のことを「空気をたべる人」と言った。 空気を食べ、消化し、表現する人。 感受性が豊かな息子にくれた言葉だった。 空気を食べるのだから、なるべくあたたかな、おだやかな... 2022.07.13 にしむらあきこ寄稿帖
稲垣尚友 トカラ列島 平島語大辞典 抄 【あじろ】(網代) カツオ節を作るときの道具。 木製の箱で、深さが十センチ前後、縦が一メートル弱、横幅が五十~六十センチある。 底に竹が張ってある。 幅二~三センチに割いた竹が、やはり、二~三センチ間隔で縦長に釘付けしてある。 梁から吊した... 2022.07.12 稲垣尚友
富井貴志 We Are Atoms その後 – 2022年7月 昨年4月に「自由学園明日館 婦人之友社展示室」での個展の直前に、We Are Atoms と名付けた彫刻刀で彫模様を施した仕事について、こちらで書かせていただきました。 当時のほとんどの仕事は私が研究室にいた頃に経験したような、単一の物質で... 2022.07.11 富井貴志
富井貴志 新しい時計 また来た。 じわーっと身体の芯から暖かくなるような感覚。 これまでものづくりをしていて一度も感じたことはなかったのに。 ————- 昨年の11月終わり頃から制作中にだけ頻繁に訪れる表現しづらい幸福感。 数ものでも一点ものでも関係なく、毎日一... 2022.05.04 富井貴志
にしむらあきこ うたうたい おちばがいっぱい わさわさわあさ ふんであるくよ がさがさがあさ がっこういきましょ ごきげんさん (おちばのうた) 通学路にどっさりと降る落ち葉の海を、息子と楽しんでいるときに作った歌である。 とにかくご機嫌良く、さっさと学校にいってほし... 2021.12.09 にしむらあきこ寄稿帖