「ウールのブランケット」片田学さんより

稲垣さんは言葉をくれる人。
初めて会ったときから今まで、折々でいくつも心に留まる言葉と出会ってきました。
それはきっと、仕事や様々な経験を通じて結実した、たしかなこと。

おばあちゃんの食器棚という物語となり、一つ一つのなかで、すうーっとそんな言葉と出会えることをうれしく思います。
様々な作り手、使い手、それをみつめてきたつなぎ手として、それぞれの存在の気配、おもいのかけらが感じられて
いまの気持ちに響き合うものがありました。

「よい仕事をすることと、自分が幸せであることがつながっている。」
ウールのブランケットの話の中で、布を織る彩子さんがたどり着いた秘訣は、
稲垣さんがいつだか話してくれたことでした。
はっとして、ほんとうにいいの!と思ったこと、よくよく覚えています。

「自分自身をよくしておくこと、健やかであること、美しいものを見て、感じて、吸収すること。」
自信がなく、不安ばかりが大きいころ、自分の気持ちをどのようにいい状態に置いてものを作っていくのか悶々と考えていたときでした。
この人がそう言ってくれる、明るいほうを向いてものを作っていいんだと思えました。
考え続けていれば、少しずつ、そしていつかは自分のもの(ことば)になってくるのかな、そんなふうにもおもうのです。

木と向き合うとき、彩子さんのように自分の心と素材が響き合う、そうあれたらと思います。
ひとりで作っているようでいろんなもの、ことの力を借りていることも今は知っている。
それぞれの素材が導くことと自分との接点を探している気がするのです。
それがいつも違っていることがおもしろいし、あたらしいと感じられるのがうれしい。

これからきっと思い悩むとき、戸惑うとき、立ち止まるとき、いろんなタイミング、節目で本を開いて、
物語とあたらしく出会いなおしていくんだろうと思っています。原点に触れ、引き寄せるように。

片田学さん
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