「くるみの木の皮のお弁当」香田佳人さん(アトリエ倭)より

「くるみの木の皮のお弁当」のお話しが好きでした。

以前「食べることは生きること」と、工房からの風で知り合った作家さんに教えていただいて、その食べることがぎゅっと詰まったお弁当のお話しだったからかもしれません。
その章の中に「誰かが大切に想いを込めて作ったものを、誰かがその想いを大切に受け取って使う。
そうしたシンプルな佳きことの巡り」という言葉があって、まさに目指しているものづくりの在り方だなと思いました。
食べることは生きることで、自分にとっては作ることも生きることだと思います。
そういう大きな佳き巡りの輪の中にいられることを、幸せに思っています。

このお話しの好きなところは、森が出てくることも大きいなと思います。
木工を生業としているので毎日のように木を触っていますが、立ち木が自然の姿のままにいる森もとても落ち着く場所です。
お話しの中に出てくる森の中の市場は、ニッケ鎮守の杜で展かれている工房からの風の姿に似ているなと思います。
あの場所で出会えたリスペクトの気持ちでつながる作家さん達の存在が、自分の宝物だなと思っています。

また稲垣さんが作家の方に読んで欲しいと書いてらっしゃいましたが、作家だけでなく子どもたちにも読んで欲しいなと思いました。
身の周りの「物」には必ずどこかに作った人がいること。
それが作家の物だけでなくとも、そこには誰かの想いや時間が抱かれていることが、小さな人たちにも届いたらいいなと願っています。

P.S  
皆さんの感想を読んで、新しく気付きを得ることも多いなと思います。
特に水谷英与さんの書かれた木のサラダボウルの感想、手仕事に対する三つのバランスについての言葉が胸に響きました。
デザインの世界からものづくりに入ったので、つい意匠や技術に走ってしまいがちですが、森から私たちの工房に来てくれた大切な自然の恵みともっと向き合いたい。
次の新しい作品は、そんな気持ちで作ってみようと思っています。

香田佳人さん(アトリエ倭)
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