冬のうた

皆様のすきな季節はいつですか?

わたしは、今は冬が好きです。
人の一生にも季節があるようにおもいます。
どの季節もうたうように心に風を通して愉しむことができたなら、それはそれは幸せなことと。

店主稲垣早苗著『おばあちゃんの食器棚』は、はるさんの食器棚の中の工藝品が語る作り手の物語。
作家としての芽吹きの春。
美しいものを、作りたいものを、と願い邁進する夏。
もの作りの営みが充実してゆく実りの秋。
心身を細くするような哀しみが訪れても、あたため癒し、その先の道へ養い蓄えることのできる冬。

作り手の春夏秋冬さまざまな季節を折々にふれ、作品や言葉などを介して、
稲垣があたたかな眼差しで見つめつづけてきたことで紡がれた物語におもいます。

日常のふとした時、心がざわつく時、頁を開くことのできる短編小説は、
作り手の方はもちろん、工藝に心をよせてくださる方一人一人に響く物語がきっとみつかることとおもいます。

わたしは、「ガラスのヒヤシンスポット」の『ー心の火種ー』。
「くるみの木の皮のお弁当箱」の『ー誰かが大切に想いを込めて作ったものを、誰かがその想いを大切に受け取って使う。ー』
です。

皆様のお話もヒナタノオトの店頭などでぜひお伺いできましたら。
日々の暮らしを豊かで潤いのあるものとしてくれる手仕事の工藝品。
美味しいものを美味しいねと大切な人と言葉をかわしながら食べる日々の食事に似て、
ー大切に作られたものを大切に使うー ことはシンプルだけれど、心がまるく温かくなる瞬間です。

心も身体も健やかに、使い手の笑顔を想い描きながら日々丹精して制作する。
そんな作り手の営みが末長く続き、未来の人の手へと継いでゆけますように。
その輪は、人の想いや手が関わることでより一層豊かなものへ育まれるようにと願い、
来年も、作り手、使い手の方と手をつなぐように、ヒナタノオトで一緒に創ってゆくことができたら幸せです。

皆様良いお年をお迎えください。

スタッフ 中川碧沙