色の温度 高見由香染織展

高見由香さんの展覧会「色の温度」、11月10日にて会期を終了いたしました。
会期中ご来店くださったお客様、お心を寄せてくださった皆様、
ありがとうございました。

これからの季節にあたたかく身体を包むカシミヤのストール、
新たに制作に取り組まれている額装の紙布、
一幅の絵のように陰影をたたえた高見さんの作品とともに、ギャラリーに柔らかで静かな時間が流れる9日間でした。

会期中の週末は高見さんも在店され、制作のこと、お手入れのことなど直接お話くださいました。
以前にお選びになったストールを身につけてご来店のお客様には、ブラッシングでお手入れくださる場面も。

また、モザイクのように彩色された自筆のスケッチや染色した糸も展示し、制作の過程の一端を垣間見ることもできました。

今展では、ストールの素材はすべてカシミヤ。
モザイクのように色がちりばめられた二重織、
ぽこぽこと凹凸を指先に感じるナナメ柄、
バードシリーズなどなど、種類もさまざまに、高見さんならではの織りの世界が広がります。

なかでも、二重織のグラデーションストールは、訪れる方が「すばらしいですね・・・」とため息をもらすほど。
そして、身にまとったときにもう一度驚かれるのが、そのバランス。
グラデーションは、試行錯誤を重ねながら取り組まれた作品で、その重ねた時間が見る人の心に届いているようです。

高見さんの制作は、1点ごとにその作品のために糸を染めます。
日常目にして心動かされた景色などからの、「この風景を染めたい」という思いがイメージの発端となり、そこから紙の上に色彩をスケッチして具体的にしていきます。
このときは心を自由にして、できるだけ制約をせずに。
その後、色に落とし込んで、実際に糸を染色。
このあたりで図柄が明確になるのだとか。
そして、設計図を作り、ようやく織りへ。
かなりコンパクトにまとめてしまいましたが、この間にも、実際に身につけたときのことなど、すべてに心を配っていらっしゃることが、言葉の端々から感じられました。

さらに、グラデーションの作品は、色のつながりに心をくだきます。
同色のグラデーションであれば、濃色から淡色への明度だけでよいのですが、高見さんの作品では、色相の違いがある中で色が変化していきます。
その色と色が矛盾なくつながるように・・・。
織上がった作品は、自然界の色が無理なくつながっているように、流れるように色を変えていきます。

額装の紙布作品も、高見さんの目と感性、手と思考が結びついた作品。
作品に使われた糸の素材は紙。
そして和紙の額はご自身で制作されています。
自ら織った布作品を生かす額が一番分かるのは、やはり自分。

額の素材を選び、風合いや厚みを加減、額と紙布とのわずかな隙間の幅まで考え抜いて完成した作品は、何の違和感もない存在感。
「ようやく自分のやりたいことができるようになってきた」
高見さんのそんな言葉が印象に残りました。
そして、「素材を追究したい」とも。

続け、重ねてきた時間が生み出す、高見さんの布。
まとって、眺めて、日々を豊かにしてくれる作品が、これからも多くの方に届くことを願います。
ヒナタノオトでは、オンラインストア「ソラノノオト」にて、16日土曜日正午から作品をお選びいただけます。
また、11月12日~14日の火・水・木は店頭でも引き続きご覧いただけます。

お見逃しの方、ご遠方の方など、この機会にぜひご覧くださいませ。

文:瀬上尚子