見るほどに魅せられて

岩田圭音さん
菊田佳代さん
toko aoki さん
による3人展も、迎える週末の土日、あと二日となりました。

今回は、toko aoki さんの作品について、ご紹介したいと思います。

糸、布、の繊細な表情、佇まいに惹かれ、表現したいものを追ううちに、
糸や布ではなく、金属によってこそ、その表現が叶うのでは、と思った青木東子さん。

今展に出品された新作ネイチャーバングルには、その想いが結実しているかのようです。

『自然物の、取り分け植物の、その形の中には穏やかな繰り返しがあって、でも同時に完全に同じ繰り返しではない自由さもあって』
と、東子さんの想いを、現物鋳造で形作ったバングル。

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今展の中でも特に作品構成が豊かなのは、スイベルリンググのシリーズ。
スイベルとは、2つの接続点を持って互いに自由に回転できる部品のこと。
しなやかな糸の編み模様の金属と東子さん好みの渋めの色合いの天然石が環となって
さりげなくも印象的なリングになっています。

天然石は自然のかたちを生かした一点もの。
そして、金属は、SV925+エイジングfinish、SV925+K18finish、K10+K24finishで制作されています。

石の色合い、風合いの彩り豊かな愉しみの一方、私は東子さんの装身具の金属部分の美しさにも惹かれています。
糸の繊細な表情が、金属そのものの色合いの絶妙な色合いで表現されているのです。

搬入日からじっくり見れば見るほど、金属、特に金色(ゴールド)の表情に魅せられます。
東子さんに詳しく教えていただいたので、こちらに一部転載させていただきますね。

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凹凸の分かりやすい太い糸を使ったものはナチュラルな状態で仕上げていますが、
細い糸を使ったものは糸の表情を強調する為に凸部と凹部の色が変わるような後加工をしています。

それは凹凸を強調するだけでなく、肉眼では確認しきれない異色感やムラ感、雑味感も同時に表現ができると思っています。
私にとってのそれらは布の杢感やカラーミックスに通じるような、単純でない色の深みや豊かさに繋がると思っています。

[エイジングシルバー]
デニムのエイジング加工をイメージしています。
時に冷たくよそよそしく感じられる金属も使い込まれた質感を得ることで身近に感じられたらと思っています。
白黒はっきりしているいわゆる燻し仕上げよりも中間のグレーが多く出る柔らかい印象になるようにしています。
黒や濃い色のお召し物や髪と相性良く品のある組み合わせにできます。

[シャトルーズシルバー]
シルバー925をベースに、凸部分はシルバーカラー、凹部分がk18ゴールドカラーになっています。
とても軽やかなゴールドカラーでシルバーの他のものともコーディネートがしやすく、
ベージュやカーキと合わせると雰囲気ある組み合わせにできると思います。
シャトルーズとは緑味の黄色の絵の具の色の名前で、お酒の名前でもあります。
こちらは特にシンプルなリングやバングルでは角度によって見えてくる色がどことなく変わって見えます。
その見え方はシャンブレー織物の見え方にもなぞらえることができ、当初はシャンブレーフィニッシュと呼んでいました。

[K10ベースのアンシエントゴールド]
K10ベースに、凸部分は明るいK10カラー、凹部分が深いK24カラーになっています。
一見は中間のK18位の色ですが、K18だけの単色のものよりも深みがあります。
また前述のシャンブレー効果により中心が明るく白っぽく、周囲が濃いゴールドに見えることで光の反射ではなく、
リングやバングルそのものが発光しているようにも見えます。
小さくても存在感あるアイテムです。

[K18ホワイトゴールドベースのアンシエントゴールド]
K18ホワイトゴールドベースに、凸部分はホワイトゴールドの黄みがかったグレイッシュなシルバーカラー、凹部分が深いK24カラーという構成のものです。
K10ベースよりも異色感が強いのでより味わい深い落ち着いた色合いに見えますが、18金の特有の密度ある光り方が充実感ある質感になっています。

なかなか画像でお伝えするのは難しいのですが、実際にお手元で見ていただくと、東子さんの目指す金属の色合い、風合いが美しく心に迫ってくるようです。
こちら、ぜひ会場でご覧いただきたいと思います。

私自身は、年齢を重ねるほどに金の装身具に惹かれるようになりました。
金とひと言でくくれない、絶妙な表情が東子さんの装身具からは特に感じます。
糸や布の表情が、金の輝きを上品に映し出しているようです。

青木東子さんは、土日在店くださいます。
石の魅力、金属の魅力、そしてtoko aokiの表現の魅力をぜひご覧いただければと思います。