実生の仕事・hada makotoさんの木のブローチ

実生(みしょう)。
この美しい日本語には、金沢で出会った。
好きな言葉が、この地でひとつ増えた。
種から芽を出し、育っていく植物。
それも、蒔いたというよりは、偶然こぼれた実から、ちから強く伸びていった草花や樹木。

・・・

花や果実の時にある人、あるいは、芽吹かせ、幹を太らせ始めた人。
・・
工芸を通して、実生の人と呼べる人たちが、わたしの心にぐんぐん植わっていった。
実生。
好きな言葉は、大切な言葉になっていた。

『手しごとを結ぶ庭』 p26より

久しぶりに、とことん「実生」の作家と出会ったような気がしました。
京都在住のhada makotoさん。

独学というか独自の技法で木彫りのブローチを制作されています。
モチーフはすべて「多年草」。

「街中で目にしたことのある草花もあれば、山奥でひっそりと繰り返し咲いている草花もあります。
多年草のように、持ち主の日常に溶け込み、なじんでゆけるような、見慣れた景色を楽しめるような毎日になればと願って制作をしています。」

とは、hadaさんから寄せられた言葉。

「オトナのナツヤスミ」展、初日に京都からやってきてくれたひとは、濃紺のワンピースに自作の木のブローチをふたつ胸もとに留めていました。

同系色の装身具がなんとも美しく。
私も同系色の服に、こうして留めてみたい。
そう思いました。
(あとで聞けば、ほかのスタッフ2名も同じことを思ったそうです!)

「身に着けたときの、落ち着き感、しっくり感を意識しています。
空気をまとえるような作品となり、日常にも、特別な場面でも、身に着ける人の気持ち次第で雰囲気を変えられるようなものに・・・」

装身具は、おおもとをたどれば、祈りを柱としながら、身分を示したり、華やかさや気持ちの高揚に響く存在という一面もあります。
けれど、空気をまとえるような・・・、しっくり感・・・
という、装身具としては控えめな感じさえする制作への想いが、まさにその姿、装いに表れているのでした。

リピートを否定してはいないそうですが、今のところ、ふたつと同じ植物をモチーフとしていないとのこと。
モチーフを選定し、デザイン画を作成。
ヒノキへトレースをして、カット。
彫刻。
木材のケア。
下地処理。
着色。
仕上げ。

もっと細かく教えてくださいましたが、独自に編み出されたことを易々とは書けないと思い、ここではざっくりと。
いずれ、1点ずつへの想いが、制作時間にぎゅっとこめられています。

そして、このお箱。

花の名前。
日本語のフレーズ。
英語のフレーズ。

どれもが同じ意味ではないのです。
hadaさんのこまやかなイマジネーションに、針先のように響く方との出会いを待つかのようなフレーズ。

hadaさん、ごめんなさい。
裏はお見せするものではないのでしょうけれど、この丹念な造り。
独自に試行錯誤の果てに作り得た姿に、一点ずつの重みを感じるのでした。

ここで、言い尽くせるものでもないですし、言い尽くすものでもないので、このへんで。
今までに出会ったことのない装身具です。

ぜひ、この週末17日、18日にヒナタノオトでご覧いただければと願っています。

イレギュラーな展開ですが、ほんの一部、先行してオンラインストアでもご紹介させていただきますね。
こちらの価格帯は上位(高額)な方で、10,000円未満の作品から店頭ではご案内させていただいています。

(ほんとうにデビューされたところで、知られていない作家さんなのでこの価格帯なのだと思います。
これから、求められるヴォリュームと朗らかに作れる数とのバランスにきっと模索されることでしょう。
ヒナタノオトのお客様は、作家をとても応援してくださる方々ばかりなので、率直にお書きしています。
ぜひ、作品をじっくり見ていただき、様々なご意見、ご感想をお伝えいただけたらと思います)

こんな風に、率直に書ける場を作っておいてよかった。
そんなふうに、思っています。

実生のたくましさと共にあるどこかはかなげ!?な新鮮さ。
ぜひ、ご覧ください。

hada makotoさんのインスタグラムには、1点ずつの作品のご紹介もあります。
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