大野八生 庭の体力 ありがとう、おめでとう、感謝の気持ち、悲しい気持ち。言葉にならない気持ちを誰かに手渡す時、花束にすることが多いものです。高校生の頃、誕生日に親しい友人たちから送られた小さな花束。可憐で、野性味があって、庭で摘んで束ねてくれたような見たことの... 2024.05.11 大野八生
クロヌマタカトシ 土の顔 小さい頃に度々、知らないおじさんが家に来ていた。そのおじさんはいつも声が大きくて僕は少し怖かった。鍵の掛かっていない玄関の引き戸をがらがらっと勢いよく開けて「おーい、まーちゃんいるかー」と家中に響く声で叫ぶのだ。大抵は母が応接していて、裏の... 2024.05.09 クロヌマタカトシ寄稿帖
ヒナタノオト工藝帖 なんとなくの先へ 七実さんへの手紙 七実さん、個展が無事終了いたしました。充実の作品群、あらためて、ありがとうございました。そして、お疲れさま、と心から労いたいと思います。始まるまで。特に案内状の制作でやりとりをしていた冬の終わりの頃、心細そうな七実さんの声に、心配をしていま... 2024.04.27 ヒナタノオト工藝帖
ヒナタノオト工藝帖 春に得たもの Gökotta × Påskヨークオッタ × ポスク糸花生活研究所(藤原洋人さん・藤原真子さん)佐藤かれんさんの作品展が終わり、スタッフ一同とても充実した気持ちでおります。ご来場いただきまして、あらためて御礼申し上げます。,藤原さん夫妻も佐... 2024.04.15 ヒナタノオト工藝帖
にしむらあきこ 恋する紙宝石 2年ぶりのヒナタノオトさんの個展です。2年前、「青の王国」のあとにすぐ2年後の個展のお話をいただき、そのときから「恋」をテーマにしようと構想を練ってきました。「恋」なんぞ遠いもの、忘れかけていたもの、懐かしいもの。そんなふうに思っていました... 2024.02.13 にしむらあきこ寄稿帖
にしむらあきこ 父とダンス 夢をみた。学校の校庭のどまんなかで、父はオフィスチェアに座っている。よく身につけていた綿の水色のパジャマを着て、茶色の模様が入ったウールのガウンを羽織っている。50歳くらいの時の父の姿をしていた。長身細身でなかなかイケメンだったので、パジャ... 2024.02.04 にしむらあきこ寄稿帖
にしむらあきこ わたしのともだち 明けない夜はない。止まない雨はない。使い古されて鮮度も落ち、ありきたりで色気のないこの言葉を、この2年近くなんどもなんどもの口の中でもごもごとつぶやいていた。そういえば中学生の時の同級生は、同じような意味をもって「不景気のあとは好景気が必ず... 2023.10.08 にしむらあきこ寄稿帖
クロヌマタカトシ 温泉と水源 水が湧き出している場所が好きだ。目には見えずとも土の中を脈々と流れ続け僅かなきっかけで目の前に現れたそれに想いを馳せるのが好きだ。いつに降った雨かも知れず、どこの山から来たのかも分からない。渾々と、粛々と、どこにも威張る仕草もないまま湧いて... 2023.01.02 クロヌマタカトシ
にしむらあきこ 空気をたべる人 先日、息子の通う放課後ディサービスで面談があった。そこで担当のS氏は、息子のことを「空気をたべる人」と言った。空気を食べ、消化し、表現する人。感受性が豊かな息子にくれた言葉だった。空気を食べるのだから、なるべくあたたかな、おだやかな、美味し... 2022.07.13 にしむらあきこ寄稿帖
稲垣尚友 トカラ列島 平島語大辞典 抄 【あじろ】(網代)カツオ節を作るときの道具。木製の箱で、深さが十センチ前後、縦が一メートル弱、横幅が五十~六十センチある。底に竹が張ってある。幅二~三センチに割いた竹が、やはり、二~三センチ間隔で縦長に釘付けしてある。梁から吊したアジロの中... 2022.07.12 稲垣尚友
富井貴志 We Are Atoms その後 – 2022年7月 昨年4月に「自由学園明日館 婦人之友社展示室」での個展の直前に、We Are Atoms と名付けた彫刻刀で彫模様を施した仕事について、こちらで書かせていただきました。当時のほとんどの仕事は私が研究室にいた頃に経験したような、単一の物質で構... 2022.07.11 富井貴志
富井貴志 新しい時計 また来た。じわーっと身体の芯から暖かくなるような感覚。これまでものづくりをしていて一度も感じたことはなかったのに。————-昨年の11月終わり頃から制作中にだけ頻繁に訪れる表現しづらい幸福感。数ものでも一点ものでも関係なく、毎日一度はやって... 2022.05.04 富井貴志