思想工房
作り手との対談

今回の作り手

梅田かん子さん

1979 富山県生まれ
金城短期大学美術科 卒業
松本佐一氏に師事
2003 工芸都市高岡クラフト展 審査委員賞
2004 朝日現代クラフト展 奨励賞
石川県立九谷焼技術研修所 修了
富山県高岡市にて工房を築く
2006 出石磁器トリエンナーレ優秀賞
高瀬竜一氏に師事
2008 朝日現代クラフト展奨励賞
2009 工房からの風に初出展
めし碗グランプリ磁器部門最優秀賞
2016 工房からの風二回目の出展

火と水と土と

2020.05.10

稲垣
かん子さんが今のような作風の基を作られたのは、いつくらいからなのでしょう?

梅田
修業の初めの頃は、赤絵細描といって、極細の筆で弁柄(ベンガラ)を含んだ赤い顔料での絵付けをしていたんです。
でも、人と同じことをするのがどうも苦手で、20代の半ばには、描きたいものをオリジナルで描こうと思ってたんですね。
ただ、それはキャラクターを描くのではなくて、器の文様だから、奥行きのない図柄で描こうと。

稲垣
バッタやゴリラといった絵は、モチーフのユニークさだけではなかったんですね。
奥行を感じさせない文様化していたところこそ、既視感のない新鮮な絵付けに映ったんだと、今、伺って思いました。



梅田
修業時代、というか今でもまだ修業中の様な感じもしますが、技術を学んでいた時代は自由に作らせてもらえないもどかしさが常にあったように思います。
そんな中、体を壊して1ヶ月程入院した事があるのですが、その時にもっと真剣に自分の作品を作りたいと心から思ったんですね。
なので、退院してからはとにかく必死で作っていました。
入院は辛い経験でしたけど、今思えば人生の転機だったと思います。

稲垣
何か不自由になったときに、あらためていろんなことを感じるものですね。
自由になったらこんなことをしたいとか、こんな風にしたいとか。
そう考えると、今のStay homeの時間も、何気なく続いていた中では見えなかったり、気づけなかったりすることに光を当てる機会かもしれませんね。

梅田
そうですね。
でも私にとって、大きな変化は、ちょうど一年ほど前にあったんですよ。
一年前のヒナタノオトさんでの展示会の後、線描きにこだわっていた私に対して、「面での表現」を稲垣さんが提案してくださったんです。
覚えていますか?

稲垣
ええ、もちろん。

梅田
それは、具体的にこうしたら?というよりも、考える余白のある言葉でいただいたので、
この一年は作品に向かってあらたに考えられて、豊かに取り組めたようにに思っています。

イメージしたものが形になるまでに思いの外時間がかかって、一年では到達出来ないのですが、日々コツコツと続ける事が気がつけば大きな実りになって今があり、そして次に繋がるのだと思います。

稲垣
私は金沢に1年半ほど住んだことがあって、その時に九谷の五彩の器にとても惹かれたんですね。
関東にいた時には気づけなかったのに、北陸の薄曇りの日差しの中で、鮮やかな五彩の器が食卓にとても映えたんですね。
かん子さんのユニークなモチーフを生かしながら、そこに五彩の美しさも加わったらいいなぁと思って。
それとなくお伝えしたことですが、聞き漏らさずに(笑)このように作品に昇華させてくださって、とてもうれしいです。



稲垣
かん子さんの作品の特徴?といってよいのか、窯の熱源が灯油なんですよね。
白磁の方は電気窯の方が最近は多いと思うのですが、磁器で灯油窯はコントロールが難しいように思うのですが。

梅田
ええ、独特なクセがあるのですが、その分趣きのある色合いに焼きあがるのでとても気に入っています。
火をダイレクトに感じられる環境ですね。
それに、工房の作業場と窯場の間に井戸水があって、自噴しているんですよ。
火と水と土。
自然の中で作れるこの環境がとても気に入っているんです。







稲垣
自噴の水、水の息吹きがなんとも清浄な感じですね。
自然の巡りの中で、自然の一部でもあるかん子さん!の空想から生まれる図案。
それが器となって生まれてくること。
ユニークだけれどナチュラル。
かん子さんならではの器づくりを、これからもぜひ伸びやかにぐんぐん進めてほしいと願っています。

梅田
今回は、この状況下で初めてのオンライン展覧会となって、一体どうなるのだろうと、不安とドキドキでいっぱいでしたけれど、このようにいろいろお話しができて、自分の仕事を客観的に見つめ直せたり、牛平さんとのうれしい出会いをいただけて、なんだか今はほっとしています。
そして、全国から早々に器もお選びいただけて、ほんとうにありがたいと思っています。

稲垣
梅田かん子さん、牛平安代さん、それぞれの工房をお訪ねして取材をする予定でしたが、緊急事態宣言下でそれは果たせませんでした。
今回は、電話、オンラインミーティング、そして、今までに交わしてきた会話を基に、この対談頁を稲垣が構成いたしました。
動画、画像の一部は、おふたりからご提供いただいたものも掲載しております。
当初の構想よりもざっくりとした対談になってしまいましたが、おふたりの制作への想いの一端にでも触れていただければありがたく思います。

作品は牛平さんは完売となっております。
梅田さんもご好評をいただいて数が少なくなっておりますが、力作ですのでぜひご覧くださいませ。
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