思想工房
作り手との対談

今回の作り手

牛平安代さん

木彫作家
1978 宮城県仙台市生まれ
香川県立高松工芸高校デザイン科
吉田木芸 木彫教室で木彫りを学ぶ
「atelierきりかぶ 」自宅に工房を開く
チェコで木彫りの糸操り人形ワークショップ「Puppet Prague」に参加
2018 工房からの風 出展
ミュージックアトリエ ピエロポンピン主催 人形劇「マーシャとくま」公演

チェコでのワークショップ

2020.05.10

稲垣
「チェコに行ってきます」

一昨年、工房からの風の出展が決まってやりとりを始めたばかりの頃、牛平さん、瞳をくるくる輝かせてそうおっしゃいましたね。

牛平
5月でしたね。
東欧のチェコへ、木彫りの糸操り人形のワークショップに参加することになったんです。
ちょうど「工房からの風」に出展が決まった春でした。
私の40歳のお祝いに、家族にちょっと無理をしてもらって、およそ3週間行かせてもらいました。

プラハの街には人形劇をしているところが至るところにあって、人形劇にかかわる仕事も根付いているように感じました。
分業化されていて、彫る人、ペイントする人、コスチュームを作る人、操るひと、脚本や演出などの職人さんが存在していたんです。

稲垣
歌舞伎、というか文楽、みたいですね。
その国固有の観劇には、それを支える人たちの仕事が重層的にありますね。
以前デンマークの国立劇場のバックヤードに入る機会がありましたが、
バレエのための衣裳部屋や、縫製室がとても充実していて、ボタンだけでもものすごい種類のストックがあって、文化の厚みを感じました。
チェコでは、人形劇がそのような存在なのでしょうか。

牛平
そうですね。
人形自体も、劇中に壊れてもすぐに直せるような工夫がされていました。
たとえば、接着も簡単なボンドではなく、銅線などをコの字型にして杭のように打ち込んでいて、破損した個所は取り換えられるようにしていて感心してしまいました。
古いものもメンテナンスをしながら次の世代へと受け継がれていくくんだなぁと。
長い年月を経て培われてきた技術や文化を肌で感じることができたことが収穫でした。

稲垣
牛平さんは、日本で、木彫技術、文様を彫ることなどを学んでこられましたが、
チェコでは糸繰り人形という、木彫から広がった世界に足を踏み入れられた感じですね。

牛平
ええ、「人形が動いてほしい」という願いを、自分の手で叶えるための一歩を踏み出した感じですね。
チェコで学んだ工夫を少しだけ応用して、自分の制作にも使わせてもらっています。

稲垣
作り手の輪もぐんと広がったのではないでしょうか。

牛平
参加したワークショップには、私の他に、世界中から集まった11人の参加者がいました。
スウェーデン、ギリシア、イギリス、ニュージーランド、アメリカと、さまざまな人たちとの出会いに恵まれました。
アジアからは私ひとりでしたけれど、充実の3週間はあっという間で。
先生はチェコ人の方で、劇場などの人形を実際に制作されていらっしゃいましたね。
設計から順番に本格的な技術や仕組みを丁寧に教えてくださったんです。

稲垣
実際に牛平さんは、どのような制作をなさったんですか?

牛平
まず最初のイメージスケッチをしたときに、クマのお母さんを描きました。
本物の熊みたいに猫背にしたかったので、スケッチにはstoop(猫背)と書いて。
そうしたら、先生が頭とお尻の部分がせり出すように操作の部分に棒を取り付けてくれたりしましたね。

一体一体の個性にあわせて工夫を凝らして、そのキャラクターの持つ「らしさ」を求めることに手を抜かない制作への姿勢。
これが私にとっては何より印象的で、チェコまで学びに行かせてもらって本当に良かったなと思ったことでした。