思想工房
作り手との対談

今回の作り手

牛平安代さん

木彫作家
1978 宮城県仙台市生まれ
香川県立高松工芸高校デザイン科
吉田木芸 木彫教室で木彫りを学ぶ
「atelierきりかぶ 」自宅に工房を開く
チェコで木彫りの糸操り人形ワークショップ「Puppet Prague」に参加
2018 工房からの風 出展
ミュージックアトリエ ピエロポンピン主催 人形劇「マーシャとくま」公演

いつも空想している

2020.05.09

牛平安代さんは京都在住。
工務店を営む方と結婚されて、京都の町中に暮らしています。
お住いの一角を工房に整えてもらい、「アトリエきりかぶ」として、制作をされています。

稲垣早苗
牛平さん、今回の二人展で制作された作品の内、特に皆さんに見ていただきたいところを教えてくださいますか?

牛平安代
「人形が動いてほしい」という願いが私の中にずっとあって、それを、小さな操り人形という姿にして壁飾りにしているんです。
思わず手に触れて動かしてみたくなる。
そんな風に思ってもらえたらうれしいなぁと思っています。

稲垣
この画像は、京都のアトリエで撮っていただいたのですが、作者の手で操っているからでしょうか、なんとも優しい調べを感じますね。
こちらはヒナタノオトにやってきて!から撮ったものですが、動から静になっても、実は動いているような不思議な印象があります。
夜中の3時には、ギャラリー内で集会をしているような。

牛平
うちのアトリエでは、東京に行くまで夜中に騒いでましたよ。
なんだかみんないなくなって、今は寂しいんですけど。

稲垣
今回、おふたりの展覧会を企画するにあたって、タイトルをどのようにしようか考えました。
「空想の手触り」としましたが、牛平さんはどのような印象を持たれましたか?

牛平
あらためて、「空想」という言葉を思ったとき、私はモノを見たり聞いたりしたときに、いつも空想しているなって気づきました。
それって誰でも多かれ少なかれされていると思うのですが、どうですか?
私の場合はそれがやや鮮明なのかもしれません(笑)

制作を通して、その空想の一部を再現しているだけなのかもしれませんが、最後のうん!よし!というゴールも最近ではハッキリとしてきたような気がします。
それは、たとえば、連想ゲームの「言葉」が「形」に変わったという感じでしょうか。
言葉にはいろんなニュアンスによって使い分けがありますね。
辞書にものってないニュアンスを、私は木彫りで表現しているのかもしれません。

稲垣
空想は言葉であったり、音楽であったり、映像であったり、絵画であったり。
牛平さんは「かたち」を心のキャンバスに展げて、日々を送っているんですね、きっと。
そして、その形が、抽象的なものではなく、具象的なものだと思うのですが、そのあたりのことをお話しくださいますか?

牛平
先日、どんなモチーフが多いですか?と聞かれたことがありました。
書き出してみたら、手で食べ物をつかんで食べる動物、ピエロ、天使、熊とウサギのぬいぐるみ、こびと、少年少女、お母さん、おじさん、旅人でした。

見返してみると、このモチーフを螺旋状にグルグル彫っているみたいです。
自然に彫りたくなったり、日常に溢れている空想の種から連想したりして、頭の中に浮かんで来たものを一つ一つ形にしています。

モチーフへの想いは、あまり意識していないのですよね。
共通点があるとしたら現実にあるようでないもの、ないようであるものに心が惹かれているみたいです。

稲垣
牛平さんは、家具などの意匠にも活用される木彫も含めた学びの場に通われたそうですが、そこではどのような時間を過ごされていましたか?

牛平
木彫り教室に通っていたのですが、先生が優しくて丁寧な方だったので彫刻刀の切れ味が悪くなったらいつも綺麗に研いでくださいました。
そのせいもあって、私は未だに得意ではないのです。

木彫り教室ではアカンサスなどのモチーフを彫刻刀のサイズや形を変えながら制作する方法を学びました。
学び始めた頃、正確に彫る事を知る喜びで夢中になりましたが、やがてどこか窮屈に感じるようになりました。
もっと、自由に彫りたいと思うようになってから自宅でも制作をするようになって。
そのうち、手作り市に出展してみたりして、少しづつ創作の楽しさに満たされていきました。

ある時、思いきって先生に作品をみてもらったとき、先生が褒めてくださったことが今でも忘れられません。
「でもこの彫刻刀じゃ恥ずかしいね」
とも付け加えられましたが。
それは私へのエールなのだと信じて、今でも背中に先生の温かみを感じながら創作をしているんです。


牛平さんは、応援してくれる人を惹きつける何かを持っているんですね、きっと。
牛平さんの空想が、誰かの目の前にやってきたとき、また新たな空想が生まれていく。
作品を制作する喜びは、そんなところにも満ちていますね。

次は一昨年、ひゅ~っとそよ風のように飛んで行ったチェコでのお話しもお聞きいたします。

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牛平安代さんの作品販売は、ヒナタノオトオンラインストア「ソラノノオト」にて行っております。
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